カシミールサファイア~世界で最も希少な宝石

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深い青色がとても美しいサファイアは皆さんもよくご存じですよね。宝石の中ではダイヤモンドやルビー、エメラルドと並んで最もポピュラーと言ってもよい宝石です。しかしそんな宝石の中でも幻の宝石と言われるようなサファイアがあるってご存知ですか?それは『カシミールサファイア』呼ばれるものですが、このカシミールサファイアは市場にも滅多に出ることがなく、まさに伝説と言ってもいいような宝石です。今回はそんなカシミールサファイアについてご紹介します。

『幻の宝石』とも言われるカシミールサファイア


サファイアはルビーと同じコランダムという鉱物に分類されます。ルビーは赤、サファイアは青と真逆の色を発色しているため知らなかったという方もいるかもしれませんが、この色の違いは含有する不純物元素によるものです。皆さんも「サファイアの色は?」と聞かれた時に思い浮かべるであろう青色は鉄とチタンが含有していることによります。そんな青色のサファイアの中でも最も美しく希少と言われるのがカシミールサファイアです。では、なぜカシミールサファイがここまで希少と言われるかをご説明します。

僅か数年で枯渇したカシミールサファイア

カシミールサファイアは、インドとパキスタン国境付近にあるザンスカール山脈のほぼ中間の高地、バッダール渓谷で1881年に発見されたものです。この発見も山崩れで露出した岩壁のくぼみの中にたまたま青色の結晶が見出されたのだそうです。サファイアが産出されるとわかったこの地域はカシミールのマハラジャが鉱山の所有権を主張します。そして1883年には軍を派遣し、元々そこに住んでいた村人は締め出されてしまいます。その後、カシミールのマハラジャは後に『Old Mine』として知られるようになる鉱山の運営をはじめ、1887年までには最上質の大型結晶の大半は取りつくされたと考えられています。
この鉱山ではクリケットのボール(直径7cm程)より大きなサファイアや数千カラットにも及ぶ宝石質の結晶、20カラットを超えるカットされたサフィアなど多くの最高品質のサファイアが産出されました。しかし、発見後、数年の間で枯渇してしまいまい、その間に採掘された推定100kgほどの最上級の原石がカットされ、市場に出回り『幻のサファイア』と言われるような伝説の宝石になったというわけです。

Old Mineが閉山したのち100mほど離れた位置からも鉱床が発見され、再びかなりの量のサファイアが産出しましたが、そのほとんどは無色~暗青色の低品質の結晶ばかりで二度とカシミールサファイアのような最高品質の物は産出していません。これもカシミールサファイアが伝説とまで言われる所以ですね。

カシミールサファイアの特徴

カシミールサファイアの特徴はコーンフラワーブルーと呼ばれる白みが若干かかった柔らかなブルーです。また、カシミールはどの石もビロードのような潤んだ色合いを持っており、この色合いは他のサファイアにはないカシミール産ならではの特徴です。
このカシミールサファイアだけが持つビロードのような光沢は、宝石内部に本当に微細な液体が小粒の帯状の層をなしているため、それによって光が散乱しているためだと言われています。通常、宝石がこういった構造を持った場合、不透明度の高い宝石になってしまうものなのですが、最上級のカシミールサファイアはペグマタイト鉱脈の熱水中の不純物の少ない環境下で成長するため、特徴的なピロードの光沢をもったのだと言われています。

カシミールサファイアの特徴

このカシミールサファイアは一度見たら忘れられないほどの美しさを持つとも言われ、一般の市場にはほとんど出回ることすらなく『幻の宝石』とも言われています。高品質のサファイアが産出される地域にはビルマ、スリランカ、マダガスカル等もありますが、カシミール産のサファイアは最も高価なプレミアム価格がつきます。

まとめ

今回は宝石の中でも最も高価な宝石の一つカシミールサファイアについてご紹介しました。カシミールサファイが幻の宝石とも呼ばれる理由は、元々の産出量の少なさもありますが、新たに見つかった鉱山でも従来のようなクォリティの物が産出されることがなく余計にプレミアがついたといった理由もあるのでしょうね。この宝石はその美しさから、手に入れたいという方も非常に多い宝石でもありますが、残念ながらほとんど市場に出回ることはありません。手に入れようと思えば基本的にオークションになるのですが、出品されるカシミールサファイアの多くは100年以上前に採掘されたものだそうです。カシミールサファイアを手に入れるとその美しさを楽しむとともに歴史を感じることもできるなんて素敵ですよね。

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